「塔」12月号より ①
印象に残った10首を
導火線もつけて供へむ黒色(こくしよく)のダイナマイトのやうなすいかを 長谷部和子
数万円の目高の話聞きながら庭桶に見る庶民のメダカ 八木由美子
基地の町に生れしことを恥じており凌辱されし少女のごとく 前原美登里
駅なかのすし屋のガラスに貼りついて早くと叫ぶ子らはわれの子 丸本 ふみ
胡瓜食む奥歯のすんと涼しくて秋はもう輪郭のうちがわに 魚谷真梨子
ワイファイがどうとかこうとか言い合いて黄帽被った一年生は 福田理恵子
誰の子も可愛くなくて丘をゆく私は欠けた器だろうか 中井スピカ
丁寧に面取りしたる小芋煮る微笑むほどの沸き方にして 金田 和子
パプリカの色鮮やかなテーブルに私の代理としてのししとう 佐原 八重
短冊の願いあふれる七夕の飾りの下に浮浪者の寝る 北条 暦
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