mother lakeのほとりにて

短歌のこと、身のまわりのことを

塔2月号より

印象に残った歌を。

 

漫才にはじけて笑ひ落語にはひびきて笑ひ客去ぬところ       亀谷たま江

ヒメジョオン群れ咲くなかに猫のゐてぬくい眠りのかたまりになる  一宮 奈生

炊きたての飯を底より混ぜるとき音沙汰のなき下の息子(こ)おもふ 久次米俊子

朝毎に挨拶交はしし友の逝く亡くなることは声を持ち去る      杉崎 康代

夕焼けに肩いからせて立ち尽くす脱藩浪士のようなアオサギ     紺屋 四郎

下駄飛ばし明日の天気占うあの夕やけはブラジルにない       武井  貢

声がした「お帰りなさい」玄関を入る瞬間に亡き妻の声       明石 森太

つたかづらの繁みの辺りに見え隠れ秋の黄の蝶たれの化身ぞ     向井ゆき子

先立ちし母の日記を亡き父は母のめがねを掛けて見てゐた      守永 慶吾

生まれた地それと思わず『ふるさと』の歌は遠くを想いて歌う    行正 健志