mother lakeのほとりにて

短歌のこと、身のまわりのことを

短歌

「左肩がしづかに」

祐德美惠子さんより 歌集「左肩がしづかに」を送っていただきました。特に印象に残った歌10首を 掲載させていただきます。力のある歌ばかりで、10首に絞るのがとても大変でした。 呆気なくひとはいのちを失へり風に隠るる蜻蛉のごと (九州北部豪雨) あるだ…

かろやかな色

橋本成子さんより歌集「かろやかな色」を送って頂きました。 消防署旧舎の取り壊されしゆえ我家に来たる消防署ネズミ あっちの世こっちの世との境目をゆく心地すと九十歳(くじゅう)の母は 生長を止める薬を与えられ菊の大輪たけ低く咲く 目覚めから肩凝り…

塔2月号より

印象に残った歌を。 漫才にはじけて笑ひ落語にはひびきて笑ひ客去ぬところ 亀谷たま江 ヒメジョオン群れ咲くなかに猫のゐてぬくい眠りのかたまりになる 一宮 奈生 炊きたての飯を底より混ぜるとき音沙汰のなき下の息子(こ)おもふ 久次米俊子 朝毎に挨拶交…

「塔」2月号より

自分の作品です。 窓に向き横一列にパンジー植うパジャマの上にカーディガン羽織り チューリップ植うパンジーの向う側おそらく花の見られぬはずの この花の咲く頃吾は元気かと問うて詮なきことを思ひぬ 真夜中にもの食ふひとと一メートル離れ眠れぬ夜を過ご…

「塔」一月号より

自作品を。 ひもすがら幼子のごと塗り絵する病室の吾誕生日の吾 一年の花々順に塗りていく色鉛筆の薄き哀しみ 眠れぬが鬱なると聞き吾が病初めて知りぬ吾がこととして 外泊を明日に控へて計画すまづはクッキー買ひに行きたし 吾が留守の夫の食事を思ひをり言…

栗木京子さんの歌集「ランプの精」より10首掲載させて頂きます。 きさらぎの月に暈(かさ)あり人恋ふるこころはいつも生乾きにて ささやかな約束なれど守りくるる人と見てをり海にしづむ陽 ゆつくりと髪乾かしてくるる母ゐることわれの今日の哀しみ 半身を…

塔1月号より10首

塔1月号より印象に残った10首を掲載させて頂きます。何となくテイストを合わせて選んでみました。 だれの背にも<ベトベトさん>が憑いてくる夕べ私の背中が重い 佐々木千代 亡くなりしものの魂ひしめきて大方あの世は騒がしからむ 山下 好美 「何故(なにゆ…

花山多佳子さんの歌集「晴れ・風あり」より印象に残った歌の中から10首。 猫がのどを鳴らすやうなる声に鳴きし今朝の鴉のこころを思ふ 枝豆を茹でたる匂ひがくらやみに悪意のごとく残りてゐたり 夜の雨はまなこを浸し鼻を浸し溺れさうなり自転車を漕ぐ 山上…

歌集「風のおとうと」より

松村正直氏の歌集「風のおとうと」より印象に残った作品の中から10首。 駅員に起こされしひと秋空の雲のようなる顔をしており もっとも愛した者がもっとも裏切るとおもう食事を終える間際に 砲弾のごとく両手に運ばれてならべられたり春のたけのこ 心よりと…

歌集「冬の葡萄」より

2014年に豊島ゆきこさんより贈られた歌集「冬の葡萄」より10首掲載させて頂きます。当時ドライアイがひどく、直ぐに読ませて頂かなかったことが、いまでも心残りです。 結婚はしないが遊びぢやないんだとその娘(こ)のことをぽつぽつ話す 帽かむり背筋…

長谷部和子歌集「月下に透ける」より

2016年に長谷部和子さんより頂いた歌集「月下に透ける」より10首掲載させて頂きます。 地下通路歩く速度は前を行く巨体の男に合はすほかなし 手の皮膚か紙石鹸かわからぬまで泡立ててゐた友と競ひて 西日中影ふみ遊びの子らの影長く伸びをり防火水槽まで…

永田和宏氏の歌集「午後の庭」より

永田和宏氏の歌集「午後の庭」より、好きな歌の中から10首. よく生きたよくやつたよと告げたきにこの世の夏がまた巡りくる コスモスの揺れの間に間に見えてゐし日本手拭があなたであつた 貼り薬背中に三枚張りつめてさあ寝ておいでとありしあの頃 亀だつてと…

歌集「春の顕微鏡」より

永田紅さんの歌集「春の顕微鏡」より、好きな歌の中から10首を。 会うことも会わざることも偶然の飛沫のひとつ蜘蛛の巣ひかる 戻りたきこの世とぞ身を震わせる墓石もあらむ桜が咲けば 濾過してもあなたは残る 歳月に溶け込みすぎて分離できない 学振(がくし…

「塔」12月号より ②

自作品を。。。。。。 闘病の苦しき日々も幸せと置き換へられて母逝きませり 式場の霊安室に式を待つ母の前にてよし笛吹きぬ 二曲目に月の沙漠を吹きにけり母の行く道遠く行く道 その覚悟とつくに出来てゐるはずともういいだらうさう思ひをり こんなにも薄く…

「塔」12月号より  ①

印象に残った10首を 導火線もつけて供へむ黒色(こくしよく)のダイナマイトのやうなすいかを 長谷部和子 数万円の目高の話聞きながら庭桶に見る庶民のメダカ 八木由美子 基地の町に生れしことを恥じており凌辱されし少女のごとく 前原美登里 駅なかのすし屋…

贈られた歌集「ふた束の水仙」より

ダンバー悦子さんから歌集「ふた束の水仙」を頂きました。 オレンジの暈しに金色の小花が咲く美しい歌集です。 あの夏のグラジオラスの花の色思い出せない母といた夏 娘待つ駅の構内銃担ぐ兵士の群れとすれ違う夜 婚約とこんにゃくの違い甘辛い舌ざわりのニ…

贈られた歌集「逆光の鳥」より

伊東 文さんより 歌集「逆光の鳥」を頂きました。 紫とグレーの暈しの中に金色の鳥が飛んでいる美しい歌集です。 豆の木を透かして届く祖母のこゑ「なかよう二つさがつとるんよ」 合格の祝ひを低き声にいふ落ちし子もゐる事務所の隅で 左胸の乳房なければ右…

贈られた歌集「海盆」より

松原あけみさんより歌集「海盆」を頂きました。 深い海を思わせる青が美しい歌集です。 狼も赤頭巾も吊されて脱力してをり川沿ひをゆく うすあをく緑茶を淹れてゐたころの母に会ひたしふいに訪ねて 鳥の巣がみえるみえるといふたびに能因塚の葉叢濃くなり 横…

贈られた歌集「山法師」より

石本照子さんより歌集「山法師」を頂きました。 山法師の画が美しい歌集です。 風に透け光に透きて枝高しくれない尖る桜冬芽は 二部屋を行ったり来たりの一日に紙飛行機を先にとばせて 赴任する人を囲みて花の下並び直していくたびも撮りぬ 花を包む苞と言わ…