mother lakeのほとりにて

短歌のこと、身のまわりのことを

「ポンポン船行く」

浜崎純江さんより歌集「ポンポン船行く」を送って頂きました。情愛細やかに、御子息との日々を詠まれています。身体に障害をお持ちの息子様のとの、介護の日々は、経験のないものには、わからぬ大変さがおありだっただろうと、推察いたします。けれど、しんどさも、さびしさも、どこか明るく、作者のお人柄がうかがわれます。

印象に残った歌10首を。

 

介護してゐますと言へば大量に湿布剤くれる慈恵医(じけい)大の先生

 

やつと昼を座りしときに向かうからのつそのつそと車椅子来る

 

車椅子にラジオ体操してる子は首回すとき目玉まはしをり

 

目にすれば俺のだと言ふ裁縫箱われが使ひて久し

 

仏様も一緒に暮らしてゐる日日(にちにち)けふの息子は仏の肩持つ

 

できること少なくなりて目を瞑る息子の傍でわれは歌つくる

 

どうなつてももうかまはない覚悟してもらつてあつた薬を飲ます

 

びゆんびゆんと上がりゆく凧を追ひかけて見上げる空のまつさらな青

 

子と我と戦ひの日々だつたのに良い時ばかりがうかび来るなり

 

服買つてけふはうれしもばかだなあ四基の位牌が笑つてゐるなり