mother lakeのほとりにて

短歌のこと、身のまわりのことを

贈られた歌集「逆光の鳥」より

伊東 文さんより 歌集「逆光の鳥」を頂きました。

紫とグレーの暈しの中に金色の鳥が飛んでいる美しい歌集です。

 

豆の木を透かして届く祖母のこゑ「なかよう二つさがつとるんよ」

合格の祝ひを低き声にいふ落ちし子もゐる事務所の隅で

左胸の乳房なければ右側へ傾く身体 きくきく歩く

全身の力絞ってさくら咲く わが空洞を埋めてあふるる

どうしても参ると言ふを止められずボトル両手に母のあと追ふ

夏ノ夜ニ地面ガ青ク燃エルンヨ。何万ノ屍体ノ燐ガ溶ケトルケンネ

コスモスは生駒の山によく似合ふ風ゆくりなく花ゆらし過ぐ

金輪際死に直すことはできぬゆゑぢやあぐらゐ言つてから死ね、弟よ

死はときに生の隙間を衝いてくる凌霄花のはなに入る蟻

式典には一度も参加しなかつた晴れやかすぎて好かんと母は