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栗木京子さんの歌集「ランプの精」より10首掲載させて頂きます。
きさらぎの月に暈(かさ)あり人恋ふるこころはいつも生乾きにて
ささやかな約束なれど守りくるる人と見てをり海にしづむ陽
ゆつくりと髪乾かしてくるる母ゐることわれの今日の哀しみ
半身をけむりのやうになびかせて秋の夜ランプの精出(い)で来ずや
つぐなひに狐の運ぶ栗おもふ坂の途中の青果店灯(とも)りて
戻りなさいと言へばランプの内に消ゆる薄むらさきの秋の恋ごころ
ふと触れし君の胸板あたたかくここが真冬の空間の底
手術糸の結び方教へくれし日の夫の指の若さ愛しむ
ただ眠るため夜のありし少女期よ身に汽水湖をはぐくみながら
もう読まぬ本束ねたりいつの日か我は短歌に裏切ぎらるるや