mother lakeのほとりにて

短歌のこと、身のまわりのことを

歌集「冬の葡萄」より

2014年に豊島ゆきこさんより贈られた歌集「冬の葡萄」より10首掲載させて頂きます。当時ドライアイがひどく、直ぐに読ませて頂かなかったことが、いまでも心残りです。

 

結婚はしないが遊びぢやないんだとその娘(こ)のことをぽつぽつ話す

帽かむり背筋伸ばして老父(おいちち)がすきとほる秋の陽のなかを行く

目もまるく顔もまあるくふかぶかと男声(をごゑ)やさしきカウンセラーなり

曖昧にやさしき光の季(とき)は過ぎまばゆさのなか鬱はあざやか

予約をし、また予約をしわたくしの生をこの世に繋ぎとめおく

歌詠むはふしぎな遊びたましひの原野に紅き花摘むごとき

天秤はふかく傾き秋われは生のよろこびの側にゐるなり

喪の日には黒く晴れの日に白く親族といふ一ふさのぶだう

重力より徐々に自由になりゆくかをさなごエイヤッとつかまり立てり

郵便局の窓口にどんとさつまいも置かれて川越の秋はたけなは