mother lakeのほとりにて

短歌のこと、身のまわりのことを

塔1月号より10首

塔1月号より印象に残った10首を掲載させて頂きます。何となくテイストを合わせて選んでみました。

 

だれの背にも<ベトベトさん>が憑いてくる夕べ私の背中が重い 佐々木千代

亡くなりしものの魂ひしめきて大方あの世は騒がしからむ    山下 好美

「何故(なにゆえ)に今ごろ厨に用がある」ゴキブリぼやく深夜の遭遇

                              宮本  華

順路きてマウンテンゴリラの檻の前面会人のごとく向き合ふ   坂東 茂子

七階の高さにまでも昇り来て一匹の蚊は母に打たれつ      阪下 俊郎

本場ものほんばものと娘は言う赴任六ヶ月(むつき)与論の台風 久長幸次郎

一匙の粥もなかなか呑みこめぬ患者に合わせ「ゴックン」と言う 山崎恵美子

真向いの青年にもう十分に知られたる「塔」という一冊     米澤 義道

行列も白馬も山車(だし)も下半分臥(ね)てみる夫の大津祭は 海野 久美

節分の赤鬼タイツは振りむかずセールの大根棚に並べて     栗栖 優子